《こないだの話》

2018 / インスタレーション / 写真、映像 (3min x 18)、iPhone、ビニール袋、封筒、他
photo : Nakayama Satomi

 大判で印刷された写真が吊られ、ゆるやかな動線が作られた空間。6台のiPhoneが吊られ、映像が流れている。それぞれのiPhoneの周囲には、映像に関連するオブジェクトがいくつか置かれている。順路の終わりらしき位置の足元には、封筒がばらばらと落ちている。

 映像はそれぞれのiPhoneごとに、複数のものが毎回ランダムに選ばれて再生されているようだ。内容は、カメラを手に持った撮影者が、誰かと話しながら歩いたりしているものだ。ひとつのiPhoneから流れる映像は、同じひとつの台本をもとにしているが、同行者や撮影時間帯の違うものが複数ある。

 一つめのiPhoneでは、柔らかい口調で高い声の男声の同伴者と話しているかと思えば、二つめのiPhoneからは、低い声でぼそぼそと話す同伴者の声が聞こえる。映像はたがいに同期しておらず、空間にはつねに複数の声が流れている。

1.
『全然懐かしくない』
「あの時はあっちでしょ、」
『あー見たような気がする、、』
「お」
(誰もいない道路)
『おー、』
(写真を撮る音)
「見して」
(ブレて地面が映る)
『暗いね』
「目だと見えんのにね」
「(咳き込む音)……喉いてー」
『風邪引いたの?』
「風邪っていうか いや風邪なんだけど
声枯れたから長引いてる」
『のど飴あるよ』
「まじ」
(ポケットを探る同伴者)

『いる?』
「え、、、ありがとう」
(飴を持った手)
「もらいました」

《こないだの話》スクリプト(一部抜粋)

 二人は散漫な会話をしながら、なにかを捨てるための場所を探しているようだ。ビニール袋が風でカサカサと鳴る音がずっと聞こえている。

 映像の中で、撮影者が同伴者に飴を手渡されている。同伴者の違うバージョンの映像では、手渡されている飴の種類も違うようだ。iPhoneの手前には、映像のひとつに映っているものと同じ種類の飴が吊るされている。

 落ちている封筒の中には、飴が一つと、台本が入っている。飴や台本の種類は封筒ごとに違っている。

 封筒には、6シーンぶんある台本の、多数存在している断片の中からランダムに選ばれたものが、2種類封入されている。台本はひとつのシーンにつき、撮影時に共通して使われた1つの台本と、撮影された映像を書き起こして作った台本が同伴者3人分、合計で4パターン存在している。また、長いものは複数のページに分割されている。

《こないだの話》封筒に封入された台本のひとつ

《こないだの話》封筒に封入された台本のひとつ