あなたの目の前にいない人について

 会えない人は、キャラクターに似ている。現在の時間に生きているというのは、更新され続ける、今まさに作られ続けている、ということだと思う。今まさに見えている、声が聴こえている人の印象は、今まさにあなたの中で作られ続けている。だから変わり続けてしまう人間の身体は、ずっと現在に縛られている。いくら想像をめぐらせても、更新され続けるのは想像をする現在のあなただ。ただ目の前にいない、声が聴こえない、というだけで、あなたと彼/彼女の時間はすっかり切り離されてしまう。

 キャラクターは、過去か未来にしか存在できない。着ぐるみの中の身体とキャラクターを切り離せないとき、見えているそれをキャラクターそのものと言い切れるのか、私にはまだわからない。彼/彼女らはたぶん、現在の時間に生きる身体を持てない。架空の存在である彼/彼女らは、「設定」として予言される未来か、「作品」として再生される過去にしかいないのだ。

 会えなくなった人の性格について、過去形で話すことが好きじゃない。たしかに、彼/彼女のふるまいが更新されることはもうなく、見ることができるのは過去だけだ。だけど、つい昨日とかに別れたばかりなら、あなたの中にはその「設定」が残っているはずだと思う。身体に縛られている私やあなたは、キャラクターと同じ時間を生きることができない。だけど、会えない人のいる時間は、キャラクターのいる時間に似ている。

2020/01/27